練習しているのに、高音になるたびにミックスボイスがかすれてしまう——そんな状態が続いていませんか。
「もっと力を入れれば出るはず」と続けた結果、声が枯れやすくなったというケースは少なくないです。原因がわからないまま練習量だけを増やすのは、まじで時間と声帯の両方を消耗するだけです。
ミックスボイスがかすれる主な原因は、声帯が閉じきっていないことによる息漏れです。声帯には「前側」と「後側」の2つの閉鎖があり、地声の練習だけでは後側が鍛えられないことが多いです。この仕組みを知っているかどうかで、練習の方向性がまったく変わります。
音楽教育の現場でも、この知識なく練習を積み重ねてしまい、声に自信をなくすお子さんを何人も見てきました。正しい方向で取り組んだお子さんは、同じ期間でも声の安定感が別物になります。
声帯の仕組みのこと、セルフチェックの方法、そして毎日続けられる発声トレーニングまで、この文章でまとめてお伝えします。

ミックスボイスがかすれる原因はどこにある?
「高音は出るのに、なぜかかすれる」という状態は、発声の根っこに問題があるサインです。頑張っているのに結果が出ないのは、やり方が原因である可能性が高いです。
ここでは、かすれが生まれる主な原因を3つに分けて整理します。お子さんの状態と照らし合わせながら読んでみてください。
息漏れが起きるのは声帯が閉じきっていないから
ミックスボイスがかすれる最も多い原因として挙げられるのが、声帯がしっかり閉じられていない状態で発声していることです。
声帯が完全に閉じていないと、発声のたびに余分な空気が漏れ出してしまいます。この「息漏れ」が声にノイズを混ぜ込み、かすれた音色になる仕組みです。
喉が痛くなるわけでもないのに声がかすれる、という場合はまずこの息漏れが原因と考えられます。声帯の閉鎖が甘いまま音量を上げようとすると、余計に息が逃げてしまうという悪循環に入るケースもあります。
| 状態 | 起きていること | 声への影響 |
|---|---|---|
| 声帯がしっかり閉じている | 空気が効率よく振動 | 芯のある安定した音 |
| 声帯の閉鎖が甘い | 余分な空気が漏れる | かすれ・息もれ感・不安定 |
声帯閉鎖の感覚を掴むには、「あー」と声を出している途中でピタッと止める練習が参考になります。止めた瞬間が声帯の閉じた状態です。この感覚を意識的に歌に活かせるようになると、かすれが減っていくことがあります。
息漏れしている声は、聞いている側にも「なんとなく頼りない」と感じさせてしまいます。綺麗な声のためには、まず息を無駄なく使える発声の土台が必要です。
喉に力が入りすぎる発声がかすれを生む
高い声を出そうとするとき、無意識に喉を締めてしまうお子さんはとても多いです。これは自然な反応ではあるのですが、続けるとミックスボイスが安定しなくなる大きな原因になります。
喉で絞るように発声していると、声帯が過剰に圧迫されます。その結果、うまく振動できずにかすれが生まれます。また、こういった発声をしているお子さんには以下のような状態が見られることがあります。
- カラオケや練習の翌日に声がガラガラになる
- 2〜3曲歌うと声が枯れてくる
- 歌い終わった後に喉が重だるい感じがする
これはほんとに要注意のサインです。喉絞め発声を続けると声帯への負担が蓄積され、声が出にくくなるという話もあります。
本来の発声は、喉ではなくお腹(腹式呼吸)と声帯の動きで声を作るものです。喉はあくまでも「通り道」であり、力を入れる場所ではありません。
姿勢の悪さや息の乱れも声に影響する
発声と姿勢は、実は深く関係しています。猫背になっていたり、首を前に突き出す姿勢だったりすると、気道が圧迫されて息の流れが乱れやすくなります。
息の流れが乱れると、声帯がうまく振動できず、声がかすれる原因になることがあります。特に吹奏楽や合唱など、長時間同じ姿勢で演奏・歌唱するお子さんには、この影響が出やすいケースがあります。
- 猫背・前傾姿勢:気道が圧迫され、息が通りにくくなる
- 息の量が多すぎる:声帯への負荷が増え、かすれやすくなる
- 息の量が少なすぎる:振動が弱くなり、声が不安定になる
「もっと息を吸って大きな声を出そう」とアドバイスすることは多いですが、実は息を吸いすぎることもあかん場合があります。息の量よりも、息をコントロールして使う力の方がずっと大切です。
声帯閉鎖の仕組みを知ると「かすれ」の正体がわかる
かすれを本当の意味で改善するには、声帯がどう動いているかを知ることが先決です。「声帯を閉じる」と一口に言っても、実はその中にもう少し細かい構造があります。
ここを理解するだけで、練習の方向性がガラッと変わります。
声帯には「前側」と「後側」の2種類の閉鎖がある
多くのボイストレーニングでは「地声は声帯が分厚くなる」「裏声は声帯が伸びる」と説明されます。これは正しいのですが、実はここで止まっているとダメダメな状態が続くことがあります。
声帯には、前側の閉鎖と後側の閉鎖の2種類があります。前側だけが閉じていても、後側が開いたままでは声帯は完全には閉じられません。後側が甘いと、そこから息が漏れてしまいます。
| 閉鎖の種類 | 働き | 不足したとき |
|---|---|---|
| 前側の閉鎖 | 地声の厚みを作る | 声が弱くなりやすい |
| 後側の閉鎖 | 声門全体を塞ぐ | 息漏れが起きてかすれる |
地声の練習だけで声帯を鍛えようとすると、前側の閉鎖は強くなっても後側が追いつかないケースがあります。これが、「地声は出るのにミックスボイスになるとかすれる」という状態の正体のひとつと考えられています。
地声の練習だけでは声帯は完全に閉じられない
「地声をしっかり出す練習をしていれば、声帯閉鎖も鍛えられる」と思っているとしたら、少し見直してほしいです。
地声を作る筋肉(甲状披裂筋)と、声帯を閉じる筋肉(閉鎖筋)は別物です。地声で歌い込んでも、後側の声帯閉鎖は強化されないことがあります。
後側の閉鎖を鍛えるには、エッジボイス(声帯を軽く閉じて出す低いガラガラした音)やハミングを使った練習が有効とされています。これらは裏声系のトレーニングとも組み合わせることで、より効果が出やすいと言われています。
- 地声の練習 → 前側の閉鎖には効果的
- エッジボイス・ハミング → 後側の閉鎖を刺激しやすい
- 裏声(ファルセット)の強化 → 声帯全体の柔軟性を高める
地声だけで押し切ろうとするお子さんは多いですが、声帯は前後のバランスで機能しています。地声と裏声の両方を使いながら鍛えていく視点を持つことが、かすれの改善につながる可能性があります。
自分の息漏れ・声帯閉鎖をセルフチェックする方法
「うちの子の声帯閉鎖、ちゃんとできてる?」と思っても、外から見ただけではわかりにくいです。でも実は、簡単に自分でチェックできる方法があります。
親子で試してみると、問題のある場所がはっきりすることがあります。
「あ」と「ん」のエッジボイスで閉鎖のバランスを確認する
声帯の前後の閉鎖バランスは、以下の方法でチェックできます。
- 「あ」の口の形で、低くガラガラとしたエッジボイスを10秒出す
- 次に「ん」の口の形で、同じくエッジボイスを10秒出す
多くの場合、「ん」のほうが難しく感じる、または出にくいと感じるケースがあります。これは後側の声帯閉鎖がまだ弱い状態を示している可能性があります。
「あ」は前側の閉鎖が主に使われますが、「ん」は後側の閉鎖が必要になります。この差が大きいほど、息漏れが起きやすい状態と考えられます。
このチェックは練習前の確認としても使えます。毎日比べていくと、後側の感覚がどれだけ掴めてきたかがわかりやすくなります。
高音で声がかすれるときに確認すべき3つのポイント
「高音になるとかすれる」という場合、以下の3点を順番に確認すると原因が絞りやすくなります。
| 確認ポイント | チェック方法 | 問題があるときのサイン |
|---|---|---|
| 腹式呼吸ができているか | 歌うときにお腹が動いているか確認 | 肩が上がる・喉が締まる感覚がある |
| 声帯が閉じているか | 「あー」を途中でピタッと止めてみる | 止めにくい・ぼんやりした止まり方になる |
| 息の量が適切か | 長めのフレーズを息を節約して歌ってみる | すぐに息が切れる・声が途中でかすれる |
3つとも問題ない場合は、音域そのものがまだ声帯の対応範囲を超えている可能性もあります。そのときは無理に高音を出し続けるより、ミックスボイスと裏声を使い分ける練習に切り替えることが賢明です。
かすれが出始めたとき、「もっと頑張ろう」とするのではなく「どこが原因か」を冷静に探る習慣がとても大切です。これはお子さん自身に教えてあげてほしいことでもあります。
綺麗な裏声を出すための発声トレーニング
原因がわかったら、次は実際に変えていく練習です。「何をやればいいかわからない」まま闇雲に練習するのは時間がもったいないです。
ここで紹介するトレーニングは、それぞれに明確な目的があります。順番通りに取り組むことで、無理なく声帯のバランスを整えていけます。
腹式呼吸で喉への負担をなくす練習法
すべての発声トレーニングの土台は、腹式呼吸です。これなしにミックスボイスを安定させようとするのは、基礎工事なしに家を建てるようなものです。
腹式呼吸ができていると、喉や肩の余計な力が抜けます。喉が楽になることで、声帯が自然に動きやすくなります。
腹式呼吸の練習ステップ
- 仰向けに寝て、胸とお腹にそれぞれ手を置く
- 両膝を立てた状態にする
- 鼻から息を吸い、お腹だけが膨らむのを手で確認する
- 胸が動いていないことも確認する
- 口をすぼめ、ゆっくりと息を吐く
- この感覚のまま、立った状態でも同じように呼吸する
最初のうちは、声の質よりも「腹式呼吸ができているか」だけを意識すれば十分です。喉で歌う癖が強いお子さんほど、ここに時間をかけることが後の上達に効いてきます。
バランスの良い声門閉鎖を作る3つのトレーニング
前後の声帯閉鎖のバランスを整えるためのトレーニングを3つ紹介します。どれも特別な道具はいりません。
① 喉を下げてリップロールする
喉頭(のどぼとけ周辺)を下げた状態で唇をブルブルと振動させながら、地声から裏声へ、また地声へと細かく切り替えます。後側の閉鎖を意識する筋肉を刺激する効果が期待できます。慣れてくると、地声と裏声のつながりが滑らかになってきます。
② 「ひ」を「え」っぽく発音して太い裏声を出す
オペラ歌手のように喉を最大限に広げながら「ヒィィィ〜」と声を出します。喉を上下に広げる筋肉(輪状咽頭筋)を刺激し、声の響きに広がりを作る練習です。最初は少し大げさなくらいやってみると感覚が掴みやすいです。
③ うなじに手を当ててハミングする
うなじ(首の後ろ)に手を当て、振動が伝わるようにハミングを続けます。最初は低めの音域から始め、声の大きさより振動が伝わることを優先します。後側の閉鎖感覚と共鳴のバランスを整える助けになります。
地声と裏声を自然につなぐための練習ステップ
ミックスボイスは、地声と裏声の中間にある声です。どちらかに偏ると、かすれたり不安定になります。この「つなぎ目」を滑らかにする練習がとても大切です。
練習ステップ
- 地声で低音から発声し、ゆっくり音程を上げていく
- 喉に力が入らないよう意識しながら、自然に裏声へ移行する
- 地声と裏声を一音ずつ交互に出す練習を加える
- リップロールで地声→裏声→地声をスムーズに繰り返す
また、地声と裏声の「響く位置」を合わせることが自然なつながりを生むとされています。頭の中心あたりに声が響く感覚で両方を発声できるようになると、切り替えがスムーズになる事例があります。さらに高音域を目指す場合は、響きの位置をより頭の上寄りにイメージすると声帯の一部だけを振動させやすくなり、地声感のある高音が出やすくなることもあるそうです。
「裏声を鍛える方法」としてはハミング・顎を軽く引く・あひる口を作る・頭から出すイメージなども有効とされています。裏声が弱いお子さんはここから始めると土台が作りやすいです。
ミックスボイスのかすれを防ぐ毎日の習慣
練習法を知っていても、日々の扱い方がダメだと声は育ちません。声帯は繊細な器官です。正しい習慣を続けることが、長期的な上達につながります。
ここでは、特に意識してほしい2つの習慣をお伝えします。
ウォームアップとクールダウンで声帯を守る
スポーツで準備運動が必要なように、発声練習にも声帯を温める時間が必要です。いきなり大きな声を出すのは、声帯にとって大きな負担になる可能性があります。
ウォームアップの例
- 軽いハミング(低めの音域から始める)
- リップロール(唇をブルブル震わせながら音を出す)
- 肩・首のストレッチ
クールダウンの例
- 練習後にゆっくりとした低音のハミング
- 水分補給(常温の水がおすすめ)
- 喉を乾燥させない環境を整える(加湿)
歌い終わった後にそのまま放置するのはあかんです。声帯をクールダウンさせることで翌日の声の状態が変わると言われており、継続練習のためにも意識してほしい習慣です。
また、喉に違和感を感じた日は無理に練習を続けないことが大切です。「少しおかしいな」と思ったら休む判断ができるお子さんに育てることも、長く音楽を続けるための重要な力です。
録音して自分の発声を客観的に聞く習慣をつける
歌いながら自分の声を正確に聞くのは、実はとても難しいことです。耳から聞こえる声と、録音された声は別物のように聞こえることがあります。
スマートフォンの録音アプリで十分なので、練習のたびに録音する習慣をつけてみてください。聞き返すことで、かすれている箇所・息漏れが多い音域・音程のズレなどが客観的にわかります。
録音を活用するポイント
- 同じ曲・同じフレーズを定期的に録音して比較する
- 聞き返すときは「どこがかすれているか」に集中して聴く
- 気になった箇所だけ抜き出して集中練習する
「なんとなくうまくなってる気がする」ではなく、「3週間前よりこの音域のかすれが減った」という具体的な変化を感じられるようになります。それがお子さん自身の自信にもつながります。
録音を聴き返すことは、独学で陥りやすい「間違った癖の固定化」を防ぐ助けにもなります。もし改善が見られない場合は、ボイストレーナーや音楽の専門家に相談することも視野に入れてみてください。
まとめ:ミックスボイスがかすれるのは息漏れが原因?綺麗な裏声を出すには?
ミックスボイスのかすれは「気合が足りない」でも「才能がない」でもないです。声帯の閉鎖が甘い・息漏れが起きている・喉に力が入りすぎているという、ちゃんとした原因があります。
そしてその原因は、正しい練習で必ず改善できる可能性があります。

この文章でお伝えしたこと まとめ
| テーマ | ポイント |
|---|---|
| かすれの主な原因 | 息漏れ・喉絞め・姿勢の乱れ |
| 声帯閉鎖の構造 | 前側と後側の2種類がある |
| 地声練習だけではNG | 後側閉鎖はエッジボイスやハミングで鍛える |
| セルフチェック | 「あ」と「ん」のエッジボイスで差を確認 |
| 基礎トレーニング | 腹式呼吸・リップロール・ハミング |
| 毎日の習慣 | ウォームアップ・クールダウン・録音 |
中学・高校の音楽の部活は、ほんとうに限られた時間です。毎日の練習のひとつひとつが、数年後の音楽体験の質を決めます。
この時期に正しい発声の土台を作れたお子さんは、声の使い方に自信を持ちながら表現を広げていけます。部活の発表会や合唱コンクールで、自分の声が思い通りに響いた瞬間の喜びは、ほかには代えがたい体験です。
逆に、かすれが続いたまま「どうせ自分は高音が出ない」と思い込んでしまうと、声そのものへの自信を失うことがあります。それがきっかけで音楽への気持ちが冷めてしまったという事例は、残念ながら珍しくありません。
だからこそ、今がチャンスです。
親としてできることは、お子さんの練習に寄り添い、正しい方向へ導く情報を届けることです。「なんかかすれてるな」で終わらせず、「なぜかすれるのか」を親子で一緒に考えてみてください。
声は必ず応えてくれます。正しい練習を積み重ねたお子さんの歌声が、何年後かにどれだけ豊かになっているか——それを想像するだけで、今の積み重ねがいかに大切かが伝わると思います。

音高・音大を卒業し、中・高音楽教員免許を取得、吹奏楽の外部講師の経験をもとに、子どもの音楽教育について日々深く考えながら子育てをしています。自分の子どもにも音楽の楽しさと学ぶ喜びを大切に伝え、成長を感じてきました。
私が大切にしているのは、子どもが音楽を嫌いにならず、自分らしい感性を育みながら、本当に成果につながる学び方を親子で見つけていくことです。間違った練習や無駄な学習で大切な数年間を失うことなく、親御さんと二人三脚で歩み、お子さまの青春の時間を実りあるものにするお手伝いをしたいと考えています。
未来の日本を担う子どもたちと、そのかけがえのない親御さんを支え、音楽を通して豊かな心と希望を育てることが私の願いです。


